やさしい妻

テキサスバーガー

2007年10月26日 23:52

ずいぶん前に家内とアラスカに鮭釣にいった。温暖化の前で夏でも寒いなか釣にでた。
鮭にも何種類かあるけどキングサーモンのシーズンは既に終わっていて、シルバー
という小型のシーズンだった。

2日間奮闘したがオヤジはカス。家内は2匹釣った。家内は以前仕事仲間と釣に来て
キングを釣っていると豪語。
更におじいちゃんは漁師、「私は漁師の孫だから。」と戦果を自慢した。

男は耐える。1年耐え再度アラスカに挑戦にいく。

結果は前年と同じ、彼女が2匹、オヤジはカス。 これできっぱりと釣は一緒に行くのは
やめた。所詮漁師の孫には勝てぬ。親父はサラリーマンの息子。(でも父親は釣りきち
がいだった。)

家に戻ると家は留守。家内に電話すると

「冷蔵庫見た?」。

「うん、明日はおでんみたいだね。」

「それじゃなくてプラステイックの袋みた?」

「見てない」

「40センチくらいのちぬが入っている。今日もらったの。うろこ取りも買ってある。」
どうしてちぬが有るのか聞くと、時々ハンバーガーを食べに来る知り合いのアメリカ
人から貰ったという。

「ふーん、俺は一杯やるから。じゃーね。」と電話を切り、一杯始める。2杯が終わったら
つまみが欲しくなり冷蔵庫を開ける。
確かに大きな袋がある。見てみると



3匹入っている。

3杯めのワインを飲みながら、冷静に向こうの戦略を分析する。
男として挑戦せざるを得ないだろうと、インターネットで「魚のさばき方」を
検索し、うろこを取り始める。

ハンバーガーの肉には「うろこ」も無ければ、骨もない。内臓もない。ひれが針みたいに
鋭く、オヤジの手を容赦なくさす。血だらけ。

ハンバーガーは良い。やはりハンバーガーはみんなに優しいのだ。



魚屋さん
が見るともったいないと思うだろうが、オヤジは1匹をさばき、「男」の責任は果たしたと自分言い聞かせ、小さい方のちぬをさばかず、ふてようと思いシンクに置く。

そこに家内と娘が帰宅したので、奮闘記を話し、2匹目のちぬを処分すると話すと、「私が
おろす。」と妻が言う。

妻は親指と一指指で小型ちぬをもつが全くどうしていいか分からない。
「漁師の孫だろ?」と言うと

「うん、でもお嬢さんだから他の人がやるの」     (注)「他の人}とは母親。

結局2匹目もオヤジの責任範囲になり、切れないステンスレス包丁で3枚に下ろす。
(というか骨と肉を離す。)

キッチンも手も魚臭く、何度も手を洗うが落ちない。あきらめて、他にやらなければ
成らない事に取り掛かる。
しかし新しいとは言え、魚の匂が気になる。

妻が来て、「みかんの皮で手をこすると匂がとれるよ」と教えてくれみかんの皮をむいて
くれる。オヤジは皮を手でもみ始める。
彼女は剥いたみかんを全部ほおばり、皮だけオヤジにくれる優しい妻なのだ。